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無性に男の人が射精するところを見てみたくなり・・
「ねぇ、ごはんはまだなの?」

吉野寛子はこの春で中学2年になった。

さっぱりとした活発な性格で、2年生ながらバスケ部ではレギュラーとして活躍している。
髪はクラブの為に長くはないが、そのプロポーションは同級生の中でも目立つ存在で、
もちろん男子からも一目置かれていた。

しかし本人は、日に日に大きくなっているような乳房に戸惑いを感じており、むしろ練習や試合の時には邪魔な存在となっていた。同時に男子の視線が自分の胸に注がれている事も、単純にイヤだという感情とは違う何かを感じていた。

「ママもさっき帰ってきたばっかりよ、急いで支度するから、先にお風呂に入りなさい」

「は~い」

タンスの中から下着とパジャマを取り出し、部屋を飛び出すと階段を勢いよく駆け降りた。

脱衣所へ入るとジーンズを脱ぎ捨てトレーナーをたくし上げ、ブラとパンティだけになって洗面台の鏡に映る自分の姿を眺めた。

厚手のスポーツブラの肩ひもをそっとはずすと、よくテレビで見かけるように手のひらで乳房を隠して、胸の谷間を強調してみた。


「エッチ・・・」

そして唇をすぼめ、鏡に映る自分に向かってウインクしてみた。
さらに全裸になるとグラビアのモデルよろしく、いくつかのポーズを取ってみた。

「ヤダヤダ、バっカみたい」

そんな自分にあきれて頭をひとつ振ると、脱ぎ捨てた衣類をまとめて洗濯機に入れようとした。

「!」

何気なく覗いた洗濯機の中に、弟の哲也のブリーフがあった。
寛子の母親は、保険の勧誘をしており洗濯は夜になることが多い。

父親は医療機器メーカのエンジニアで出張が多く、あまり家にはいないので、最近男物の下着は弟のものだけである。
したがってその日も昨夜脱いだ数枚の衣類に隠れる様に、見慣れた白い塊が目に入っただけの事だった。

急に心臓が早鐘を打つ。

そしてまるで、何かに操られた様に、無意識のままそっと洗濯機の中に手を伸ばすと、その白い塊をつまみあげた。洗濯はまだなのに、それだけが何故かじっとりと濡れている。

寛子はこれまでそんな事は一度もした事はなかったし、むしろ弟の下着など、絶対に触れたくないと思っていたのだ。
それなのにこうしてブリーフを手にとって広げている自分が、とても不思議だった。

洗濯機の縁につまみ上げたブリーフを広げて置くと、まるで何かの解剖でも行うかのごとく、前部の合わせ部分、つまりペニスを出す部分から指を差し入れて見た。
じめっとした感触が寛子の指に伝わる。


一度手を抜くと、今度は逆に、つまりブリーフの内側から外に向かって合わせの部分に指を差し込んでみた。

合わせの布地の隙間から、寛子の指が見えた。
ちょうど男性が用を足す時のペニスのすように。
そのまま手をそっと握り、ブリーフ全体の感触を確かめた。

そこで、寛子は我に返り、ブリーフを洗濯機の中に戻すと、自分の脱いだ衣類も詰め込んで、あわてて浴室へはいった。

体を流す際に、自分の性器が普通ではない事に気づいた。


「え?」

生理の予定はまだ先のはずである。
恐る恐る股間を覗き込んだが、出血はしていない。
安心して湯船に浸かると、なぜかほっとした気分になった。
だが、たった今自分のした行為はまだ信じられなかった。

“どうしちゃったんだろ?”

湯船の中で、再度自分の性器をさわってみた。
やはりどこかおかしい。

「ん・・・・!」


花びらの縁を巡って上部に突き出たつぼみに指が触れた瞬間、まるで電気にしびれたような感覚が襲った。

寛子はオナニーについての知識はあったのだが、普段の性格とは裏腹に性的な行動については、とても臆病であった。
これまでも自分の性器を指でもてあそぶ事が何度かあったが、快感を得る前に不安になり行為を中止していた。

息がつまりそうだった。またも心臓の鼓動が速く大きくなる。
もう一度、こんどは更にそっとつぼみをなでてみた。


「くうっ!!」

これまで味わったことのない快感が全身を貫く。

“なに?!やだ、あたし・・・”

そう言えば、おなじクラスの恵美がこんな事を言っていた。



「オナニー。気持ちいいんだから、寛子もやってみれば」

「でも・・・」

「大丈夫よ、わたしなんか小5の時からやってるよ」

「もう、ドキドキよ」

「アソコさわりながら、おっぱいとかも自分で揉んでさ」

「ヘンタイ・・・・・」

「心配ないって」

「いいよ、わたしは・・・・」


そう言えば購読している「中2コース」などの雑誌にも、オナニーの記事が何度か掲載されていた。
たいていは「しても大丈夫か?」といったものだった。

しかし寛子にとっては、そんな事をしている人がいることも信じられなかったし、身近な恵美からこの話を聞いたときはショックだった。
もちろん寛子はそんな事は絶対にするもんか、とさえ思っていたのだ。

体を洗うのも忘れて、寛子は湯船で身を固くしていた。
そしてこれ以上、自分の性器をいじる事はやめにした。
風呂から上がって、夕食を終えるころには、もう先ほどの気分もどこかに消し飛んでいた。

リビングでテレビの歌番組を見終わると寛子は自分の部屋へ戻った。
哲也は塾からまだ帰っていない。向かい合わせの彼の部屋は、洞窟のように真っ暗だ。

ベッドに横になり、雑誌を眺めていると、脱衣所で自分のした行為がまるで、映画の1シーンのようによみがえってきた。そして今日の放課後の会話を思い出した。

「ほらっ、寛子!、矢島、見てごらん」

「えっ?」

体育館で合同練習の時だった。同じ部の裕子が耳元で囁いた。

「矢島よ、矢島。アソコ勃ってる」

「何?」

「ちんちんが、勃ってるのよ」

そう言われてそちらを見ると同じ部の男子の一人が短パンの股間を尖らせていた。
それはあからさまで、遠目にも確認できた。
本人も気にしている様子で、しきりに周囲を見まわしている。
足をもぞもぞ組んだり、時折股間を叩くような素振りを見せた。


「ウッソぉ、ヘンタイ」
「でもさぁ、男子って不思議よね」
「どして」
「ああなると、シャセイするのよね」
「シャセイ?」
「そ、ちんちんからエキを出すの」
「やだぁ」
「ほら、小学校の時、性教育で聞いたでしょ、セックスして、膣の中でシャセイして、卵子とどうのこうのって」
「うん」
「セイエキって言うんだっけ、“ぴゅっ”って」

寛子もクラスの男子が持ってきた青年向けマンガで、射精する様子を見たことがあった。
“どぴゅっ”とか“ぴゅっ”とかの擬音がついて、ペニスの先端から液体が放出するシーンだ。

「でもさ、どーして勃ってんのかな?」
「バスケの練習の時にちんちんを勃てるなんて」
「中はどうなってるのかな?」
「いやだ、裕子ヘンタイ!!」
「でもさ、寛子。見たことある?勃ってるちんちん」
「なっ、ないわよ」
「ほんと?哲ちゃんのとか見たことないの?」
「普通の時のは、そりゃ見たことあるけど・・・勃ってる時のなんて見たことないよ」
「どんな感じなんだろね?」
「バカ、やめなさいよぉ」

“ぴぴぃー” 
顧問の教師の吹く笛の音で彼女達の会話は中断された。
クラブ終了後の更衣室で、先ほどの会話が再開された。


「ねえねぇ、見た?見た?矢島」
「えっ何」
「ちんちんが勃ってたのよ」
「ウソォー」
「ほんとよ、ねー、寛子」
「う、うん」
「わたしも見たわ」
「やだ、もう、早く教えてくれればよかったのに」
「美佐もヘンタイだ」
「きゃー」

着替えを終わると、寛子、裕子、理恵、美佐の4人は誰もいなくなった教室に場所を移すことにした。

「で、どう?みんなは、勃ってるちんちんって見たことある?」

仕切っているのは裕子である。


「ないわよ、そんなの」
「あたしもない」
「あたし、あるのよ、いつ話そうかなって思ってたんだけど」

そう答えたのは、4人の中でもっとも性の知識の豊富な理恵だった。

「うそ、うそ、誰の?」
「うん、アニキの」
「お兄さんって高2だっけ?」
「そう」
「で、どうやって見たの?」
「えっ?うん」
いつもは歯切れのよい理恵が言い渋っている。


「この間なんだけどさ、夜勉強してて、喉が渇いたからジュースを取りに行ったのよ」
「そんでアニキの部屋の前を通ったら、すこしドアが開いてたの」
「で、“何やってんのかな”って感じで、何気なく覗いたのよ」
「それで」
「・・・・・・・」
「えっ、やっば言わなきゃダメ?」
「何よぉ、そこまで言っておいて」
「そうよ、そうよ」
「分かったわよ、言うわよ」

4人は自然と顔を寄せ合い、声もいつしか、ささやき声になっていた。

「そしたらアニキがベッドの上で寝ころがってさ、いじってるのが見えたの」
「え、何を」
「何って、アレをよ」
「ちんちん?」
「そう」
“ゴクリ“。誰かが喉をならした。


「それがね、いつもみたいに“だらん”って感じじゃなくって」
「何か、こう、大きくなってたのよ」
「うそ、うそ」
「で、どうしたの?」
「あたしもさぁ、びっくりしちゃって」
「えっ、どうやって、いじってたの?」
「そんなに目の前で見た訳じゃないから、わかんないけど、こんな感じでこすってた」

そう言うと、理恵は右手を軽く握り上下に動かした。
寛子は頬が熱くなってくるのを感じた。ふと見ると裕子も美佐も紅潮していた。

「それって、オナニー?」
「うん、多分」
「イヤだぁ」
「で、びっくりしちゃって、部屋にもどったのよ」
「ビックリよね」


「でもさ男子ってみんなやってるって、何かに書いてあったよ」
「ウチのクラスの男子もかなぁ」
「多分やってるよ」
「ヤダなぁ、何となく」

この3人は寛子がクラスの恵美とオナニーの話をしたことは知らない。
恐らく3人とも本当のオナニーはしていないのだろう。

「で、理恵、シャセイは見たの?」と裕子。
「見てない、だってビックリしちゃって」
「なぁんだ、もったいない」
「あんた、何言ってんのよ」
「でもさ、みんな見て見たいと思わない、シャセイするところ」
「え、それは」
「見たくないよ、そんなもん」

寛子が言った。


「本当?私は見てみたいな」

裕子がそう言うと、美佐もうなずいた。

「興味あるよ、そうゆうのって」
「わたしもこの間はいきなりだったからびっくりしたけど・・・・」
「今度チャンスがあったら絶対おしまいまで見ちゃうもん」

理恵も同調する。

「寛子はほんとに見たくないの?」
「えっ」

寛子の胸の鼓動が早まった。
この3人とはこうした会話をちょくちょくしているが、寛子はいつも気が乗らなかった。

絶対にイヤだという訳でもなかったが、しかたなく会話に参加するといったパターンが多かったのだ。
しかしなぜか今回のテーマである“射精”は、これまでそうした話題に無関心だった寛子の好奇心に火をつけた。


「うん、絶対って訳じゃないけど」
「ほらぁ、結局見たいんじゃん」
「う、うん」
「でもさ、本当にウチのクラスの男子もオナニーしてるのかなぁ?こうやって」

理恵はまたも右手でペニスをしごく動作をしながら、ポニーテイルにした髪を揺すって、独り言のようにつぶやいた。

哲也もオナニーをするのだろうか?寛子はふと思った。
理恵の兄のようにベッドでペニスをしごいている弟の姿を想像したが、あわてて振り払った。
そして“あの子はまだ小6だもん、してる訳ないよ”と自分に言い聞かせた。
 
「聞いてみようか?、誰かに」
と裕子が誰とはなしに聞いた。
「よしなよ、ヘンタイみたいだよ」
ついさっきの弟の痴態を想像した自分を非難するように寛子は答えた。


「でも、寛子も知りたいんでしょ」
「そりゃそうだけど、男子になんて聞けないよ」
「河野とかだったら、教えてくれそうじゃん」

河野はバスケ部の同級生で、ひょうきん者で通っていて、よくヒワイな冗談を言っては、寛子達の気を引こうとしていた。
彼女達も表面的にはイヤがる振りをしていたが、自然と会話をする機会も多かった。

「そうね、わたしもアイツならきっとしゃべると思う」

理恵もがしきりにうなづいている。

「そう言えばさぁ、“ムセイ”って言うのは知ってる?」

これまで聞き役に徹していた美佐が切り出した。

「ムセイって、寝たまま精子が出ちゃうヤツでしょ、精子のおねしょ」

さすがに理恵は知っていた。

「それがどうしたの?」
「この間ね、何かの本に載ってたんだけど、精子ってね、溜まると自然に出ちゃうんだって」
「だから、時々自分で出すのはしょうがないんだって」
「へぇ~」

寛子は夢精についての知識がなかった。
もちろん言葉ぐらいは聞いた事があったが、深い意味は知らなかった。

「私たちの生理と同じぐらいにね、男子もムセイがはじまるんだって」
「そうそう、それ聞いた事がある」

寛子が初潮を迎えたのは小学5年だった。
弟の哲也は6年だから、夢精は体験しているかも知れない。

「でさ、パンツに精子がでちゃうじゃん、それを自分で洗うんだって」
「何で?」

「恥ずかしいんだって、お母さんとかに知られるのが」
「ふ~ん」
「わたしも生理が来たときは、ママにすぐ言えなかったもん」
「そうよね、わたしもそうだった」
「ねぇ、ねぇ今度さ、河野呼んで聞いてみようよ」
「さっきの事?」
「うん、シャセイとかムセイとかオナニーとか」
「もう、裕子って本当にヘンタイじゃないの」
「でさぁ、ついでにちんちんが勃ってるところも見せてもらっちゃったりして・・・・」
「ヤダぁ」
「きゃー」

4人は口々に非難の言葉を発し、笑いながら教室を後にした。
しかし寛子だけは、心の隅に決して消せないしこりを残すことになった。



洗濯機にあった哲也のブリーフを観察したのは、こうした理由があったのだった。
哲也のブリーフは濡れていた。
昨夜、夢精をして“恥ずかしいから自分で洗濯”したのだろうか?

そう考えながら、寛子は知らず知らずのうちに股間に手をしのばせていた。
またしても、先ほど風呂場で感じた“変なあたたかみ”が襲って来たのだ。

そっと、パンティの中に手を入れて見ると、花びらから内腿のあたりが、じっとりと湿っている。
風呂場で確認したので経血でない事は確かだ。
花びらの周囲は、まるで蜜が染み出たように潤っている。

ゆっくり目を閉じて、左手で胸をまさぐってみた。
ブラをしていなかったので、パジャマ越しに乳首が固く尖っているのがわかる。
そっとその頂点をつまんでみた。すると、つまんだ乳首を中心にしびれるような快感が全身を貫いた。


パンティの中の右手の指が、じわじわとつぼみへ向かう。
そこで、寛子はあわてて手を引きぬいてしまった。

ここしばらくこうした性の話題が非常に多い。はじめは抵抗があった自分だったが、次第に興味が募ってくるのが恐かった。

このままオナニーを覚えてしまったら本当に“ヘンタイ”になってしまうのではないかという罪悪感が、寛子の手をパンティから出させたのだ。

体の奥ににじんじんするような感覚を残したまま、寛子はベッドから跳ね起きた。
歯を磨きに洗面所へ向かうと、哲也が入浴中であった。
鏡の中の自分とにらめっこをしながら、ついつい哲也の脱いだばかりのブリーフに目が行ってしまう。

すり硝子越しに哲也のシルエットが浮かぶ。寛子はさまざまな思いを巡らせ、歯磨きはほとんどうわの空だった。
と、その時ガラス越しのシルエットが急にはっきりと写し出されたかと思うと、全裸の哲也が出てきたのだ。

「何だよ、ねえちゃん、いたのかよ」

哲也はそう言うと慌てた様子もなく、タオルをつかんだ。

「バカ、エッチ、ちょっと待ってなさいよ」

寛子はそう叫ぶと、哲也に背をむけた。

しかしその視線は洗面台の鏡に映る哲也の裸体に釘付けになっていた。
タオルで髪をゴシゴシと拭いているので、目が合う心配はない。
哲也の腕の動きにあわせて、包皮をかぶった股間のペニスが揺れている。

寛子は金縛りにあったように、視線を逸らす事ができなかった。

哲也のペニスはまるで象の鼻のようでもあり、ミノムシのようでもあった。
その付け根の部分には、うっすらと陰毛が生えはじめているようだ。
いままでもこんなシーンは何度も経験しているはずだった。

弟の性器も幾度となく見ている。
しかしそれらはあくまで目に入ったというだけの事だったので、自ら進んで男性器を観察したことはなかったのである。


こんな行動をとらせたのも、今日の会話の影響なのだろう。

“意外とちいさい”と思った。
“でもこれが勃つと、どうなるのだろう?”

やはり興味深い。
揺れているペニスの奥に、稲荷寿司のような陰嚢が見えた。だらっと垂れ下がっており、やはり小刻みに揺れている。頭をふき終えた哲也は、寛子に向かってタオルを投げつけた。
寛子はあわてて視線をはずした。

「バカ、何見てんだよ、スケベ」

「何すんのよ、見てなんかいないわよ!!はやくパンツはきなさい」

「バカ哲也、信じらんない」

寛子は、慌てて口をゆすぐと洗面所を飛び出した。


部屋に戻った寛子は、本棚から“保健体育”の教科書を取り出した。
ベッドに飛び込むと、当然のように“男性器”のページを繰った。

“陰茎”、“亀頭”、“睾丸”、“精巣”・・・・・

寛子の目にこうした活字が飛び込んでくる。
たった今、目にした哲也のペニスと、教科書の図がオーバーラップする。
しかし当然の事ながら教科書に掲載されている図は平常時のペニスである。

しかも断面図になっているのでリアリティに欠ける。
話題になった“夢精”についての記述もあった。寛子は本を閉じ、じっと考えた。

“勃つとどのくらいまで、大きくなるのか?”
“その時、陰嚢も変化するのか?”
“マンガのように本当に、精液がほとばしるのか?“
“夢精について確認してみるべきか?”

様々な思いが寛子の頭を駆け巡り、想像上の“勃起したペニス”が浮かんでは消える。

“やっぱり見たい、どうしても本物を見てみたい”

この夜、寛子の中で何かが変わった。



それからしばらく友人達は特にあの話題には触れなかった。
しかし寛子の中では、勃起したペニスと、その先端からほとばしる精液などのイメージが、こびり付いて離れなかった。

教室の中でも、クラブ中でも男子の股間に自然と目が行ってしまう自分をどうする事もできなかった。
そんなある日の昼休みの事だった。ぼぉっと外を眺めながら、クラスメイトと雑談していた寛子の耳に、クラスの男子の会話が飛び込んできた。

「まじかよ、そんなに飛ぶのか?」
「顔にかかった奴もいるらしいぜ」
「天井に届いて、鍾乳洞になってたりして」

はじめは特に気にも留めなかったので、何の話か見当がつかなかった。

ところが、ある男子がこんな事を言った。

「オレ、この間の夜、出ちゃってさぁ」
「夢精か?」

「!」

寛子の全神経が“夢精”という単語に、強烈に反応した。
そばで話しているクラスメートの話などまったく耳に入らず、その男子達の話に集中した。

「オレもあるぜ。小学生の時だけど」
「げっ、オレ毎日せんずってるから夢精はした事ねえなぁ」
「おまえはやりすぎだぜ」
「でも、タカシなんか先週の日曜日に7回もやったら、最後は粉が出たって言ってたぜ」
「バーカ、んな訳ねえだろ」

彼らの会話は、それ程大きな声ではなかったので、所々聞きづらい事もあった。

「ちょっとゴメン、何か気分が悪いの」
「えっ、大丈夫?まだ時間あるから保健室行けば」

クラスメートが心配気に寛子の顔を覗き込む。

「ううん、いいの。ちょっと席で休めば大丈夫だと思う」
「ほんと顔が赤いし、熱あるんじゃない?」
「平気、悪いけどゴメンネ」


もちろん嘘である。
彼女の座席は会話している男子生徒の2つ前なのだ。
自分の席についた寛子は、腕を枕にして机の上にかぶさるようにした。
こうすれば彼らの話がもっとよく聞けるはずだ。

「でもさ、せんずりとかってさぁ、何回ぐらいできるのかなぁ?」
「一日でか?」
「うん、俺はせいぜい3回もやれば、チンポがヒリヒリしてくるぜ」
「甘いなキミは、僕は5回はOKだね」

“まちがいない、彼らはオナニーの話をしている“

寛子の聴覚はまるで、野生動物のように彼らの会話を一字一句漏らさず捕らえている。
またしても鼓動が速くなるのが、自分でも分かる。それ以外にもあの日、風呂場やベッドで感じたあの感覚が下半身を襲った。

「でも、夢精ってもったいないよなぁ」
「うそ、すげえキモチいいじゃん」
「え?、ああ、そん時はいいけど、あとの事」
「パンツ、やばいもんな」
「せんずる時みたいに、どっかに出せればいいのに」
「寝るときティッシュを巻くとか」
「ばあか、だったら出してから寝ればいいじゃん」
「確かにそうだな」

寛子の頭の中で、さまざまな映像が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
男子達が“せんずり”と呼んでいるのは、オナニーの事だと知った。

“せんずり”という単語は聞いていたが、あまりよい言葉だと思わなかったので、
聞き流していたのだ。それに彼らは「気持ちいい」と言っている。一体どんな感じがするのだろう。
この間寛子が、つぼみを愛撫した時のような感覚なのだろうか?それに“1日に何回”、とも言っている。

寛子は顔をあげると話し込んでいる男子生徒達の方をなにげなく見た。
と、同時に彼らがベッドに寝転んで、勃起したペニスを握り締めしごく姿がオーバーラップした。頭はぼぉっとして、目が潤んでいる。

「おいっ!」

男子生徒達は、寛子が振り向いた途端に、別の話題に移ってしまった。




その日、クラブの時、寛子は思い切って理恵にこう尋ねた。

「ねえ、理恵」
「何?」
「あのさぁ、ちょっと聞きにくいんだけど」
「何よ、急に」
「えっ、この間話していたお兄さんの事」
「ああ、アニキのアレね」
「もうちょっと、詳しく聞きたいんだけど」
「どうしたの、寛子?いつもはイヤがる癖に」
「うん、ちょっと気になって、ほら、うちの哲也とかもするのかな?って」
「ああ、哲ちゃんはまだだよ、だってまだ小6でしょ」
「うん、でもね」
「いいわよ、じゃ後で私の教室においでよ」
「うん」

着替えをすませて、理恵の教室へ行くと、彼女が窓際で手招きをしている。
裕子は今日はかぜでクラブを欠席していたし、美佐は塾があるので先に帰ってしまった。

「どうしたの、まじめな寛子があんな話を聞きたいなんて」
「うん、ちょっと気になってるだけ」
「哲ちゃんの事?」

理恵が確認する。

「姉としてって言うか、母性本能って言うか」
「なんちゃって結局さぁ、寛子もスケベなんじゃん」
「やだ、そんなんじゃないよお」
「ところでさぁ、あれからお兄さんの見たの?」
「ううん、見てない」
「いつもドアが閉まっているし、わざわざ開ける訳いかないでしょ」
「でもきっとやってるよね」
「そういえば、お兄さんのちんちん、どんな形だったの」
「あ、形?」
「うん」
「ちょっと待ってね」

と言うと理恵は学生かばんを開けて、シャープペンシルとルーズリーフを1枚取り出した。

「何、絵を描くの?」
「だって口では言えないもん」
「ますますヘンタイ」
「あなたの為に書くんでしょ、まったく」
「ああ、ゴメン、そうだったね」

理恵は、ペンをくるくる回しながら、目を閉じて兄のペニスを再現している。

「全体的には、こう、んー、ちょっと違うかなぁ?」

そう言いながら理恵は筆を進めた。
それはちょうど保健の教科書に載っていた図をさかさまにした様なものだった。

「で、ここがこうなって・・・・」


“おや?”

寛子は先日目撃した哲也のペニスを想像していたが、理恵の絵のモノとはなぜか違っている。

“そうか皮がないんだ”

哲也のは包皮に包まれており、理恵の兄のものは亀頭が完全に露出しているのだ。

「だいたいこんな感じかな?」

完成した絵は出来の悪いキノコのようであるが、なかなかの描写力である。

「コレってさ、やっぱどう見ても亀の頭だよね、キトーっていうんでしょ」

理恵はシャープペンの尻で、亀頭部分をコツコツと叩いた。

「でさぁ、ここに皮をかぶってるのをホーケーって言うのよ」
「ホーケー?」
「そう、普通は大人になると自然に剥けちゃうんだけど、剥けないままの人もいるんだって」
「そういう人をホーケーって言うの」


「へぇ、なんでそんな事まで知ってるの?」
「へへっ、実は昨日ね、アニキの部屋でさぁ」

そう言うと理恵はいたずらっぽく笑いながら机に腰掛けた。

「Hな本、読んじゃったのよ」
「どんなの?」
「ハダカとかいっぱい載ってるヤツ」
「でね、その中にホーケーの相談も書いてあったの」
「ふ~ん」
「日本人の男は70%がホーケーなんだって」
「へぇ~」

“じゃ哲也のペニスもいずれ皮が剥けるのか”

寛子は思った。

「あっ!、やばい、やばい、こんな絵を誰かに見つかったら大変よ」

と言いながら理恵は今書いた絵を丸めると、ちょっとおどけた仕草でごみ箱へ捨てた。

「でもさ、理恵、男子ってそういう裸とか見てどうするんだろうね」
「やだ、もちろんアレに使うのよ」
「え?
「もう、寛子は何も知らなすぎるよ」
「そうゆうの見ながらオナニーするんじゃん」
「写真を?」
「そう、だってちんちんてさぁ、女の裸見たりすると勃つんじゃない?」
「うん」
「それで、見ながらヤルわけよ」
「へぇ~」
「寛子も見てみたいんでしょ?男のオナニー」
「やだ、もう」
「そう言えば今日ね、クラスの男子が“せんずり”って話してたけど、理恵知ってる?」
「もちろんよ」

と言うと理恵は胸を張って見せた。


「千回こすると射精するから、“せんずり”なのよ」
「えっ、千回??」
「すぐ出ないの?」
「すぐは出ないわよ」
「結構時間かかるのよ、だって千回だもん」

理恵はまるで男の生理を知り尽くたような口ぶりだ。

「こうやって千回こするの、シコシコ」

理恵は先日して見せたゼスチャーを再現した。

「こう?」

寛子もつられて右手を上下に動かした。

「そうよ、でも、よく疲れないなって思うよ」
「ほんとうね、こんな事千回もするより、握力の練習の方が楽だよね」
「うん、うん」



寛子は家に帰ると自室にこもり、右手を握って上下にしごく運動を繰り返した。

“せんずり”

その単語が渦巻いている。寛子は部屋を見回すと、手近にあったヘアスプレーの缶を持ち出し、そっと握ってみた。

その缶は寛子の手で握るにはすこし太すぎた。
哲也のペニスのサイズを思い出しながら、再度部屋を見回すと本棚にあった「ソックタッチ」の容器が目に入った。

“大きさはこんなもんかしら?”

その容器は、直径4cm、長さが10cm程の円筒形のものである。
寛子は容器を手にベッドに寝転がりながら、左手で容器の下部を持ち、右手はその容器を包むように握りそっと上下させた。
と、その拍子に、容器のキャップがはずれた。

「ソックタッチ」とは靴下がずり落ちない為の一種の糊で、足に塗って靴下を止めるのである。
したがって先端部には、塗るタイプの湿布薬のようにボールが入っていて、その表面をころがして使用する。

キャップの捻じ込みの溝はあるものの、その形状は理恵が描いた亀頭部を連想させた。

“あっ”

寛子もその事に気づいた。
そしてその先端のボール部分を人差し指でぬぐってみた。
もともとの成分が糊である為、寛子の指に粘着質の液体がついた。

“やだ、これ、べとべとする”

寛子はその容器の先端をつまむように、また転がすようにもてあそんだ。
当然手はべとべとになった。しかし今はそんな事はすこしも気にならない。
そして右手全体で先端部を包むと、くねくねとこね回した。

“はぁ、はぁ”

いつしか寛子の息遣いが激しくなり、胸の鼓動も外から聞こえるぐらいになっている。
3分もそうしていただろうか、寛子はベッドの上に身を起こし、自然に右手の動きを激しくしていた。

するとその白い容器の先端から、“ぴゅー”という音を立てて、精液が噴水のように吹き出てくる幻を見た。


もちろんこの段階で彼女は実際の射精の瞬間を知らない。


しかし友人やクラスの男子達の話、そしてマンガのイメージが彼女にそんな幻を見せたのだ。

“あっ、ちんちんがシャセイしてる・・・・・”

その時だった。

“あああっ”

寛子は体が一瞬宙に浮いたような感覚に襲われた。
そして急に体中の力が抜け、ベッドに突っ伏してしまった。
頭の中がまっ白になり、膝はがくがくと痙攣している。

喉がなり、体の芯が言いようのない快感に包まれている。「ソックタッチ」の容器を射精に導いた事で、彼女は生まれてはじめてのオーガズムを体験したのだった。
それから数時間、寛子は母親も心配するほどの放心状態だった。


「寛子?大丈夫、熱でもあるの」
「ううん、平気」

夕食もまともに喉を通らなかった。

“あれって一体何だったんだろう?”
“でも、すごい感じだった”


寝る頃になっても痺れたような快感のしっぽが股間の奥の方に残っていた。
寛子にオーガズムが理解できるはずもなく、ただ本棚に戻した「ソックタッチ」の容器をぼんやりと眺めるだけだった。

それからというもの寛子は家へ帰るとまっ先に、この容器をもてあそんだ。
が、直接自分の性器に触れている訳でもないので、それほどの罪悪感はなかった。
もちろんこの秘密の遊びを友人に話す事はしなかった。
やはりどこか後ろめたさがつきまとったからである。

回を追う毎に初めての時のような快感はなくなったものの、じわじわと体を突き上げるような感触は寛子を虜にした。

また「ソックタッチ」の容器以外にも様々な擬似ペニスを物色した。
しかし他の容器ではあのぬるぬるとした感触がなく、射精のイメージも湧きづらい事が多かった。


最初は、漠然と容器をいじっていただけだったが、容器を股に挟んで、両手で包んで揉んで見たり、そっとくすぐるように撫でてみたりと、次第に自分なりに色々なバリェーションを加えていった。

そしてこの白いペニスの持ち主の反応をも空想する様になった。
あこがれている隣のクラスの佐伯を登場させるのには、さすがに抵抗があった。

佐伯のオナニーシーンは、同じクラスの男子生徒の様に簡単に想像できなかったし、彼がそんな事をしている筈がないと信じたかった。


まず身近な哲也から始めた。
しかしこれはこれで子どもの頃からの印象が強すぎたし、彼の包皮をかぶったペニスは今一つ、エロチックなイメージが湧かない。

そこで、始めは先日クラブ中に勃起していた矢島を選ぶ事にした。

大きな熊のぬいぐるみを彼に見立てて、ベッドに寝かした。
そしてぬいぐるみの足元に座ると、「ソックタッチ」の容器をその股間にあてがった。
ユニフォーム姿で横たわる矢島の短パンを寛子がそっと下ろす。


するとブリーフがテント状に張っている。
そして前部の合わせ部分から指を差しいれ(これは哲也のブリーフで実体験していた)、屹立したペニスをつまみ出す。

始めは緩やかに、そして徐々に強く早く、寛子は「ソックタッチ」の容器に執拗に愛撫を加える。
先端を手のひらや指でこすったり、人差し指と親指で茎部を圧迫したり、とそのテクニックは自然と高度になっている。

下半身をむき出しにして、潤んだ目で自分を見上げている矢島。
実際に男がどんな反応をするかも、今の寛子には重要なテーマになっていた。
寛子は目を閉じ、そのシーンを夢想する。

“ううう”

ため息混じりに矢島が身悶える。


寛子はその股間に顔を近づけ、さらに刺激を加えながら射精のシーンを待つ。

そしてその瞬間が訪れた。
白い容器の先端部から、噴水のような液体が天へと噴出する。


“ああっ、矢島君、出したのね”

寛子は射精を終えた容器をそっと撫で、込み上げる快感に身を委ねた。

“やっぱり、ホンモノのちんちんを触りたい”
“本当のシャセイが見たい”


そんな思いが彼女の中で膨らんでいくのであった。




「寛子、寛子っ!、ちょっと」

ある日の朝、登校中の寛子に理恵が呼びかけた。
そして乱暴に寛子の腕を取ると、そのまま学校のトイレへと駆け込んだ。

「何よ!一体」
「ニュース、ニュース、大スクープよ」
「どうしたの」
「うん、ついに見ちゃった」
「えっ、何を」
「ほら、アレよ、アニキの」
「オナニー??」
「そっ!昨日ね」

洗面場の前で身を寄せ合う二人。

「“ついに”って感じよ」
「うそうそ、どうだった」
「ええー、一言じゃ言えないくらい、もうビックリよ」
「早く教えてよ」

“キーンコン・カン・コーン”

始業のチャイムが校内に流れた。

「あっ、まずい、今日はHRがあるんだ」
「何よ、早く聞きたいのに」
「じゃさ、お昼にさ、お弁当を校庭で一緒に食べない?」
「美佐とか裕子も呼んで」
「いいわよ」
「じゃあ、後で、きっとね」

そう言うと理恵は脱兎の如くトイレを飛び出した。

“ついに聞ける”

残された寛子は何故かすぐに動くことができなかった。
もちろん寛子にとって、それからの授業はまったく手に付かなかった。
3時限目には、めずらしく教師からかなり強く叱られてしまった。

教師はもちろん、クラスの生徒達も、まさか寛子が授業中に“オナニーの妄想”に浸っていたなどとは思わなかっただろう。 

待ち焦がれた昼休みがやって来た。
校舎を出て、眺めるとあらかじめ申し合わせていたテニスコート脇には、まだ誰もいなかった。
弁当を抱え、校庭を足早に横切るとき、体育の授業を終えた矢島が声をかけてきた。

「吉野!外で飯食うのか?」
「えっ、あっ、うん」

寛子の視線は自然と矢島の股間に吸い込まれる。
いつも空想で寛子が脱がすあの短パンをはいている。
そして彼女の手にはあの容器の感触が、鮮明によみがえる。

「いっ、急ぐから、じゃぁね」
「おう」

矢島はそういうとクラスメートと共に校舎へ駆けていった。
寛子は小走りにベンチへ向かい、ハンカチを敷いて座ると弁当を開けた。
開けた弁当の中にソーセージが入っていた。

“あっ”

寛子は、はたと気づいた。

“ちんちんって言えばソーセージだ”
“なぜ、もっと早く気がつかなかったのだろう”

そして、そのソーセージをフォークで刺し、親指と人差し指でそっとつまんでみた。
「ソックタッチ」の容器とは明らかに違う感触だ。プラスチックの無機質な固さではなく、まぎれもない肉の弾力。

“これだ”

「ごめ~ん、寛子待ったぁ?」

声に気づいて顔をあげると、裕子と理恵がこちらに向かっている。


「あれ?美佐は」
「うん、何か昼休みに委員会があるんだって」
「そう」
「“後で絶対聞かせて”って言ってた」

3人はベンチに並んで腰掛けると、さっそく報告会を始めた。

「昨日の夜、うーん12時過ぎよ」

理恵がつぶやくように切り出した。

「実はね、昨日もアニキの部屋のドアは閉まってたのよ」
「だけど、そーっと開けてみたの」
「うそ、大胆ね」
「見つかったらどうするの?」
「そんなの辞書借りに来たとか何とか、誤魔化せるわよ」
「そうかなぁ」

裕子が身を乗り出す。

「で、やってたの?」
「ううん、ベッドに寝てはいたんだけど、やってなかった」
「何だあ、じゃ見てないの?」
「いいから聞きなさいよ」
「でね、私もちょっとがっかりして一度部屋に戻ったの」
「それで、今度は2時過ぎにトイレに起きたのよ」
「うん」
「そしたら、アニキの部屋から廊下に明かりが漏れてたの」
「え?」
「さっき覗いたとき、閉め忘れちゃったみたいで」
「ラッキーって感じ」
「でね、足音しないように、またそーっと覗いて見たのよ」

寛子も裕子も箸を止め沈黙したままである。
もう食事の事は忘れてしまっているようだ。


「そしたら・・・・・」
「そしたら?」

ここで理恵はもったいぶるように、卵焼きをゆっくりと口に運んだ。

「や、やってたんだ?」

裕子の声もうわずっており、しきりに唇をなめている。
理恵は二人の顔を交互に覗き込むと、小さくうなづいた。

「そ、これよ、これ」

理恵は箸を持ったまま、右手であの動作をしてみせた。
寛子も喉が渇いてしかたがなかった。

「アニキの部屋ってね、入り口のすぐ右にタンスがあって、その向こうがベッドなのよ」
「だから、見えるのはお腹から下だけなの」
「顔はみえないんだ?」
「そう、だから気づかれないって訳」
「で、どうだった」
「うん、この間一度見てるから、今度はそんなに慌てないで見れたよ」
「みんなにちゃんと報告しなきゃいけないし」
「それに今度はさ、ちょうどこっちを向いてやってたのよ」
「この間は仰向けだっけ」
「そう、そう」
「パジャマもパンツもはいてないから、もう丸見えよ」
「それで右手でちんちんをこうやって、すごく早く動かすの」

理恵は激しく手を前後に動かした。

「音とかするの?」

こんどは寛子が合いの手を入れる。

「ベッドが“ぎっぎっ”って揺れててさぁ」
「時々ね“うっ”とか“はっ”とか声が聞こえてくるのよ」
「上の方はよく見えなかったんだけど、やっぱハダカの本とか見てたみたいで、時々ページをめくるような紙の音もしてた」

寛子は自ら創作した架空のオナニーと、今のこの話をダブらせている。


「でね、2分ぐらいそうやって見てたら急にうつ伏せになったのよ」
「えっ、ちんちん持ったまま??」
「そう、こう腰を浮かせて、う~ん、ちょうど膝を曲げて四つん這いみたいな感じ」
「その後、“しゅっしゅっしゅっ”って音がしたかと思ったら、ベッドにティッシュを敷いたの」
「それからはもっとずっと早く手を動かしてたわ」
「痛くないのかな?ってぐらい」
「・・・・・・」
「でさあ、ついに出たのよ、あれが」
「シャセイ?」
「そう、精子よ」

寛子はすでに体の奥がしびれていた。太股を強く閉じるだけで、あの部分から電流が走る。

「何ていうか、こう不思議な感じ」
「え?」
「だって、ドロドロしてるのよ」
「うそ?おしっこみたいなヤツじゃないの??」
「違うわよ、もっとずっと白くって、ほんとカルピスみたいな感じ」
「“ぴゅっ”って音した?」
「ううん、アニキの“ううっ”って声だけ」
「音、しないんだ」
「うん、よくわからないけど、聞こえなかったよ」
「でもすごく面白かったわよ、ちんちんの先っぽから、“びゅびゅっ“って出てきて」
「でね、ティッシュに“びちゃっ“と飛ぶのよ」
「あ、それでティッシュを敷いてたんだ」
「ピンポン」
「精子ってさ、しばらく出てるのよ、“びゅっ”って飛ぶのは、1~2回で、その後はドロドロって滴れてるの」
「へぇ~」
「わたしもドキドキしちゃってさ、何か変な気分になっちゃったわよ」
「そこまで見てから部屋に戻ったの、しばらく眠れなかったわよ」

「・・・・・」

寛子は声が出なかった。

“おしっこみたいじゃないんだ”
“音もしないんだ”
“何回も出るんだ”

しばらくは3人とも無言だった。
理恵が思い出したようにつぶやいた。

「でもさ、男って不思議よね」
「ちんちんからおしっこと違うものが出てくるんだから」
「うん」

裕子も何故か言葉が少ない。

「あれ、もうこんな時間だ」

2人は理恵の声に我に返り、残りの弁当を慌てて食べた。

その日帰宅した寛子は、まだ軽い放心状態だった。結局午後の授業にも身が入らず、クラブも欠席してしまった。
しかし、今日聞いたイメージはひとつ残さず記憶していた。
時刻は3時半、母親も哲也もまだ帰っていない。

自分の部屋へかばんを置いてキッチンへ向かった。喉が渇いて仕方がないのだ。
冷蔵庫を開けて目についた清涼飲料水を、ほとんどひと息に飲み干した。
すると寛子の視線が、冷蔵庫の中段に置かれたサラミソーセージを捕らえた。

“どきん”

何かの合図の様に心臓が高鳴る。
そっと手に取って見ると、それはとても冷たかった。
しかし、肉の持つ特有の弾力と表面の何ともいえない手触りは、寛子に新たな感動を与えた。

さっそく部屋へ戻ると、制服を脱ぐのも忘れて、冷蔵庫から持ち出したサラミを取り出した。
太さこそあの容器ほどはないが、その弾力がよりリアルな印象を与える。
寛子はベッドに横になると、スカートをたくし上げ、サラミを股間に挟み込んだ。


股間から突き出している赤黒いサラミと、寛子の白い太股やパンティが奇妙なコントラストを呈する。
そして理恵の兄の行為を思い出すと、体を横向きにした。
自分の股間から突き出した赤黒い棒をそっと右手で握り締める。

「ソックタッチ」の容器はいくら握力をかけても反応がなかったが、サラミは寛子の握力を心地よく押し返す。
左手でサラミを股間に固定して、右手でその先端部を撫で回す。
当然寛子の敏感な部分を肉棒が刺激する。

“んんん”

寛子はまたしても、新たな快感にときめいていた。

“すごい・・気持ちいい”

寛子は体を横向きにしたまま、理恵から聞いたように右手を激しく動かした。

しかしあまり強く動かすと、サラミは股間から抜けてしまうので、強弱をつけて握ったり、付け根の部分から手を這わせたりした。
本人は意識していないが寛子のパンティのその部分にうっすらとシミが浮き出ている。

“はぁっ、はぁっ”

右手の動きにあわせて、寛子の息遣いが激しくなる。
そして体を起こすと、四つ這いの形になった。そろそろフィニッシュだ。

“はっ、はっ、はっ”

寛子は首を少しねじると、胸元越しに自分の股間から突き出た赤黒い肉棒を凝視した。
すると先端から、今度は白い、そしてドロドロとした液体がベッドに向かって放出する。


“びゅびゅっっ”


それは緩い放物線を描いて、寛子のグリーンのベッドカバーへと落ちてゆく。

“あああああっ”

寛子はサラミを握り締めたまま、ベッドに突っ伏した。
またしてもオーガズムに達したのだ。

エレベータの中のような、飛行機のような落下感覚が全身を包み、寛子を快楽の淵へと導く。
パンティのその部分は、おびただしい愛液によりぐっしょりと透けていた。

“んんんん”

その姿勢のまま、寛子は10分以上動くことができなかった。

こうして寛子のおもちゃは「ソックタッチ」から「サラミ」へと移ったが、時折思い出したように手にとって愛撫する程度で、オーガズムも一度きりの事だった。
弟のオナニーも気にはなっていたので、夜時折部屋を覗き込むことはあった。

だが、哲也は理恵の兄のように深夜まで起きている事はなかったし、どうやらオナニーもまだ覚えていないようだった。

季節が変わると寛子を始め友人達の興味も別の事柄へと移ろい、流感のように過ぎ去ったかに見えた。
しかし心の底に刻み付けられた性癖は、決して消えることはなかったのである。


2ヶ月程が過ぎ寛子の願望も薄れた頃、皮肉にも寛子の念願が達成される日が来た。
その日は早朝練習があったので、いつもよりかなり早く起床した。

早朝練習は7時からだったが、たまたま早く目覚めた寛子は6時ずぎには学校に着いていた。
そして先に着替えを済ませて、カバンを教室に置きに行った。
しいんと静まった校舎はとても不気味だ。夜は夜で恐ろしいが、こうした朝も別の意味での不気味さが漂う。

控えめな上履きの音が廊下の隅まで行き渡り、他には何の物音もしない。
そして自分の教室のドアを開けたようとした寛子は“はっ”と息を呑んだ。
誰もいない筈の教室に人影が見える。

“誰?”


ドアの開く音に、かがみ込んでいたその人影が弾かれたように立ち上がった。

「加賀くん・・・・」
「あっ、よっ、吉野?!」

加賀は同じクラスの男子生徒だが、色白のおとなしい性格でそれほど目立つ存在ではなかった。
しかし別に不細工な訳ではなく、むしろ甘いマスクの部類に入る顔をしていたので、女子からの人気もそこそこにあったのだ。
毎朝一番に登校していると言う話は聞いていたが、クラブにも所属していない癖に、と不思議に感じていた。

「何やってんの??」
「えっと・・・・」

彼は教室の最後部、生徒達のロッカー(といってもただの四角い棚)の前で、黒っぽい布切れを手にしていた。と、寛子の視線が、加賀の手にしている布切れに注がれた。


「やだ、それっ!!」

彼が握り締めていたのは、女子が体育の時に着用するブルマーだった。
ほとんどの生徒は夏場以外、体操着は特に汚れなければ前述のロッカーの中に入れっ放しなのであった。

「どしたの?それ?何してるのよ」
「いゃ、えっと」

加賀はブルマーを握り締めたまま、うつむいてしまい、微動だにしない。
寛子はかばんを手近の机に荒々しく置くと、加賀に詰め寄った。

「それ、誰のなの、ちょっと貸しないさいよ」

そう言うと大股で歩み寄り硬直している加賀の手から、ブルマーをひったくった。

「やだこれ史子のじゃない、どうしてあんたこんなもの持ってるのよ」
「・・・・・」

依然として加賀は何も言おうとしない。


寛子ぐらいの年齢では、まだ女子の方が立場的に強い事が多い。
特に彼女のようにクラブのレギュラーをこなすような活発な性格の場合は、この傾向が顕著である。
ふと目を移すと、ロッカーの棚の上に、史子の体操着入れの中身が広げられている。

「ちょっと!!何とか言いなさいよ」

加賀の肩をこづきながら、寛子は攻撃の手を緩めない。

「先生に言いつけてやるわ、いいわね?」
「あっ、ダメだよ、言わないでくれよ」

寛子の申し出に加賀は急に脅えたようにそう言った。

「ダメよ、だって何も言わないんだもん、絶対に言ってやるわ」
「頼むよ、言うからさ、先生には黙っててくれよ」
「全部言うのよ?ウソついたら言いつけちゃうからね」
「わかったよ」

寛子は手にした史子のブルマーと棚に広げられた体操着を畳んで布の袋に入れると、もとのロッカーに戻した。


加賀は肩を落としたまま、力なく手近の椅子に崩れるように腰掛けた。
寛子は机に座って、そんな加賀を見下ろす。

「で、史子のブルマーなんてどうするつもりだったの?」
「・・・・」

加賀はまだ歯切れが悪い。

「言いなさいよ」

寛子は机を叩いた。その音に加賀はまたしても縮み上がり、ついに観念したのかゆっくりと口を開いた。

「絶対誰にも言わないでくれよ、絶対だぞ」
「言わないわよ、約束する」
「本当だな、絶対言わないでくれよ」

加賀は寛子を上目遣いに見上げたが、すぐに視線をそらす。
そして机に書かれたいたずら書きを爪でこする様な仕草をしながら、ぽつりぽつりと話し出した。


「に、匂いを嗅いでたんだよ・・・・・・須藤の…・・」
「須藤のブルマーの・・・・・」
「えっ?匂いを」
「そうだよ」
「何でそんな事すんのよ?」
「あいつ、いつもいい匂いがするから・・・・」
「いい匂い?」

史子は寛子のクラスの中でもませていて、時折口紅をつけていたり、コロンをつけていたりした。
確かに寛子もそんな香りにうらやましさを覚えた事もあった。

「匂いかいでどうするのよ」
「なっ、何もしないよ、ただ嗅いでるだけだよ」
「ウソよ、ただ匂い嗅いでるだけなんて」
「ほっ、本当だよ、ただそれだけだよ」
「いいわ、そうやってウソをつくなら、やっぱり先生に言いつける」
「ダメだよ、言わないっていったじゃないか」
「だって、あんただって全部話さないじゃない」

加賀はしきりに首を振っている。その姿は寛子のサディスティックな気分をさらに煽った。

「どうしても言いたくないんならいいわよ」

そう言いながら寛子は机から飛び降りると、自分のかばんを取りに行った。
加賀はまだ机を見つめたままである。
自分の座席にかばんを置くと、寛子は強い口調で加賀に言った。

「これから職員室へ言って、言いつけてやるわ」
「加賀くんが、史子のブルマーの匂いを嗅いでたって」
「やめてくれよ、言わないでくれよ」
「もう知らないわ」
 
突然加賀は席を立つと、寛子の方へ走ってきた。そして寛子の肩口をつかむとしきりに揺すった。


「なっ、頼むよ、言わないでくれよ、ほんとに全部しゃべるから」
「ちょっと痛いわよ、離しなさいよ」

加賀は予想以上の力で、寛子の腕をつかんでいる。

「痛いっ、ほんとに離してよ」

寛子は乱暴に加賀の手を払い除けた。
加賀は、両手でズボンの端を握り締めている。
きっと子どもの頃から緊張した時の癖なのであろう。
寛子の視線は知らず知らず加賀の股間へと向かった。

“この人きっとエッチなことしてるんだわ“

裕子の言葉を思い出すと、寛子の股間をしばらくぶりにあの感覚が襲った。

“勃ってるちんちん見せてもらっちゃったりして・・・・”

寛子の思考が高速に回転し、ある計画を思いついた。

“加賀ならちょうどいいかも”
「あんた、変なことしてるんでしょ、史子のブルマーで」
「えっ」

加賀が驚いたように顔を上げた。

「どうなの?」
「し、してないよ、そんな・・・・」
「ウソ、男子はみんなするって言ってたわ」
「しないよ」
「先生に言いつけてもいいのね」
「そ・・・・・」
「はっきり言いなさいよ、イヤらしいことしてるんでしょ」
「そ、そ・・・・・」
「何、聞こえないわよ!もっと大きな声で言ってごらん」
「そ、そうだよ」

“やっぱり、こいつオナニーしてるんだ、史子のブルマーで”

「やっぱり、してるの」
「う、うん」

どうやら加賀は史子のブルマーを“おかず”にオナニーをしているらしい。

「どこで、やるの?まさか学校で?」
「ううん、家で」
「家でって、あんたブルマーを持って帰るの?」
「うん、それで朝早く返しておけば、誰にもわからないし・・・・・」

加賀の話によれば、彼は前日誰もいなくなった頃を見計らって、獲物をかばんに詰め込んで、
夜自室でもてあそび、翌朝そっと返却をしていたのだという。

「あんた、ヘンタイじゃないの」
「いつからそんな事をしてるのよ」
「・・・・・」
「5月頃委員会が終わって一人で教室に戻ってきて何気なくロッカーを見たら、女子の体操袋からブルマーがはみ出ていて・・・・・」
「そんなこと、何回ぐらいやってるの」
「誰かのブルマーがあれば、ほとんど毎週・・・・・」
「ばっかじゃないの、毎週そんな事してたの?」
「うん」

加賀の声は蚊のなくような小声だったが、あきらめてしまったのか質問には正直に答えているようだ。

「て事は、史子の以外にも持って帰ってるっ事?」
「・・・・・」
「どうなのよ!」
「うん」
「じゃあ、恵美のとか直美のとかも?」
「うん」
「ひょっとして、あたしの・・・・も?」
「・・・・・」

加賀はしばらくうな垂れていたが、意を決したように顔をあげた。

「うん、お前のも借りた」

“あたしのブルマーで、オナニーしたのね!”

寛子は久しぶりに訪れる興奮にすっかり支配された。
股間はまるでぬるま湯を浴びたように、生暖かい感触に包まれ、敏感なつぼみが刺激を求めて蠢いている。

「やだ、ヘンタイよ、あんた」
「ごめん・・・・・もうしないから、言わないでくれよ」
「わかったわ、約束だし、先生には言わないわ」
「本当に?」

加賀の顔が輝く。その笑顔は、やはりなかなかの美少年だ。

「うん、あたしも約束は守る、だけど」
「だけど・・・・・」
「ちょっとお願いしたいことがあるのよ」
「何?」
「うん、今は言えないから、今日の放課後にここで待ってて」
「クラブが終わるまで、絶対よ」
「わかったよ、でも本当に誰にも言わないでくれよ」
「大丈夫、約束よ」

更衣室に向かいながら、寛子はあんなに大胆に加賀を尋問した自分に驚いていた。
それにしても自分のブルマーを使ってオナニーをしている男がいるなんて。


寛子は“軽蔑しなければ”と思ったのだが、オーガズムを感じたあの日以来、こうした性的な事に対して自分を止める事はできなかった。

朝の練習をしながら寛子は頭の中で、何度も繰り返し今日の台本を練った。
もちろん授業もうわの空で、教科書やノートの余白にペニスのイラストや卑猥な単語を書いたり、消したりした。
誰にも見咎められなかったのは幸いだった。

そしてこれからの計画について何度も何度も頭の中で組み立てては壊し、壊しては組み立てた。
時折加賀を見ると、いつもと変わらない様子で授業を受けている。
しかし休み時間や昼休みなどには、常に彼の視線を感じた。

きっと心配でたまらないのだろう。
しかし寛子は朝の一件を恵美はもちろん、誰にも話すつもりはなかった。
そして放課後、寛子は高まる期待を打ち消すようにバスケットに集中した。
その日は部内の練習試合だったが、いつにも増した寛子の活躍を顧問は賞賛した。



「寛子!!いっしょに帰ろ」

クラスメート以外の理恵達にも、加賀の件は話していない。

「あっ、ゴメ~ン、ちょっと教室に用事があるから、先に帰っていいよ」
「そうなの、じゃ先に帰るね、バイバイ」

更衣室で理恵達にこう言いながら、心の中では“きっと聞いたらビックリするわ”と思っていた。

わざと着替えに時間をかけたおかげで、寛子が更衣室を後にする頃には、もう誰も残っていなかった。
教室に戻ると、加賀がぽつんと窓辺で校庭を眺めていた。

「加賀くん」
「あっ、吉野」
「誰にも言ってないよな」
「大丈夫よ、誰にも言ってない」

加賀の肩が安堵の為にがっくりと落ちる。
恐らく今日一日は彼にとって悪夢のように長かったに違いない。


「それで、話って何だ」
「うん、ここじゃちょっと言えないわ」
「ついて来て」

加賀と寛子はカバンを持って教室を後にした。
そして駐輪場の脇を抜けて、誰もいなくなった体育へ向かった。

「吉野、どこ行くんだよ」
「いいから、来なさいって」

そして正面の舞台の袖から、階段を上がると、普段は使われない様々な器具を置いてある場所へと入っていった。

「吉野、まずいよ、先生に見つかったら・・・・・」
「大丈夫、今日は職員会議があるから、7時過ぎまで誰も来ないわ」

実はこの場所は寛子達女子バスケ部員の“秘密の場所”だった。
昼休みや放課後などでも、ほとんど人が来る事はない。
彼女達は1年生の頃から、よくここでこっそりとお菓子などを食べているのだ。


「何だよ、こんなところまで来て」
「うん」

寛子は迷っていた。
ここまでは大胆に行動してきたのだったが、この期に及んで急に不安になってきたのだ。

“加賀は誰にも言わないだろうか?”
“自分もヘンタイだと思われるのではないか?”
“もうここまで来てしまったのだから、今更悩んでもしかたないわ”

二人は折り畳みの椅子を出すと、向かい合う形で腰掛けた。

「加賀くん」
「えっ」
「今朝の事だけど・・・・・」
「あっ、うん」

加賀は急に照れたように横を向いた。

「話って言うのは・・・・・」

寛子はこぶしを握り締め、ひとつうなずくと最後の迷いを断ち切った。

「アレ、見せてほしいの」
「アレ?」
「うん、男の人の」
「・・・・・」

加賀は驚いたように目を丸くしている。

「だから、アレよ」
「アレって、チンコの事か?」

寛子は、窓を見ながら小さくうなづいた。

「見せろって、そんなバカ」
「イヤなら、今朝の事みんなに言っちゃうわよ」
「で、でも、そんな・・・・」
「ねぇ、早くしなさいよ、どうするの?」

寛子は次第に大胆になり、力の様なものがみなぎってくるのを感じた。

「イヤなの、じゃ言っちゃおっと」
「まっ、待てよ、わかったよ、見せればいいんだろ、見せれば」


加賀は当惑している。今朝失態を目撃されたかと思えば、今度は性器を見せろと迫られている。

「さっ、早く、時間がないわよ」

時刻は5時を少し過ぎていた。
初秋の夕暮れにしては明るい日で、強い西日が体育館の窓の影を床に落としている。

「・・・・・見せれば・・・・・いいんだな」
「うん」


加賀はゆるゆると立ち上がると、ベルトに手をかけた。

寛子の心臓が高鳴る。

そしてホックをはずし、チャックを下ろすと黒い学生ズボンが加賀の足元に落ちた。
そしてそのまま放心したように、棒立ちのままである。

加賀はトランクスをはいていた。寛子の父親のはいているようなタイプだ。
白いブリーフと違って何故か大人っぼい印象を与える。
しかし全体にだぶついていて、ペニスのシルエットは浮かんでいない。

「パ、パンツもか?」

寛子は押さえ切れない程の興奮に包まれながらも、力強くうなずいた。
加賀はトランクスの腰の部分にいったんは手をかけたものの、また椅子に腰掛けてしまった。

「やっぱヤダよ、恥ずかしい」
「何よ、女子のブルマーでイヤらしいことするほうがずっと恥ずかしいわよ」
「でも・・・・・」
「ほんとにもう、怒るわよ、いいの?先生に言われても」
「それは・・・・」


加賀はついに観念した。今度はすっと立ち上がると、勢いよくトランクスを膝まで下ろした。

それは寛子の目にまっすぐに飛び込んできた。

陰茎は夕日のせいか妙に赤い。そして哲也のものと比べると、やや大きいような気がする。
そしてそれも包皮に包まれていたが、哲也のよりも余った皮の部分が少ない。

付け根部分の陰毛はもう大人並みに生えそろっている。
だらっと垂れた陰茎の向こう側には、きゅっとしまった陰嚢が見える。
ふと見上げると加賀は歯を食いしばり、目を閉じている。

「もっ、もういいだろ」

そして耐えかねたような声で、そう尋ねた。

「まだ、だめよ」
「えっ?」

ありったけの勇気を振り絞って同級生に性器をさらしている加賀は、こんな苦悩はこれまで経験した事がなかったはずだ。

「ねぇ、コレって勃つんでしょ」
「それは、・・・・・」
「どうなの、大っきくなるんでしょ」
「なっ、なるよ」
「どうすると、そうなるの?」
「・・・・・」
「だから、エッチな写真みたりとか・・・・・」
「そう、じゃ大きくしてみてよ」
「ええっ?」
「早く大きくしてみて」
「むっ、無理だよ、自分でそんな事できないよ」

寛子はペニスは自在に操れる物だと思っていた。
自分の意志で勃起させる事かできると考えていたのである。

「え?ダメなの」
「う、うん、自然にでかくなるんだよ」
「へぇ、そうなんだ、じゃどうすれば大きくなる?」
「知らないよ、そんな事」
「ウソ、自分でエッチなことする時は大きくなってるんでしょ?」
「そ、そうだけど」
「じゃ、できるじゃない」

寛子はいつしか椅子を前に引き寄せ、加賀から1m足らずのところにいた。
手を伸ばせばそのペニスに手が届く距離である。
加賀の足元の学生ズボンがまるで何かの抜け殻のように見えた。

「さ、早く」
「でも、それは・・・・・」
「早くしなさいよ、時間がないのよ」
「・・・・・」

加賀は、目を閉じたまま右手をペニスに添えた。
そして茎の部分を親指と人差し指でつまむと、ゆっくりと前後に動かした。

その動きにあわせて、時折包皮の奥から亀頭部が見えたり、隠れたりしている。
寛子は瞬きもせず、その様子に見入っている。口がカラカラに渇き、しきりとつばを飲む。


「やっぱ、ムリだ」

しばらくすると加賀はため息のようにそう言った。

「ダメだよ、こんなんじゃ勃たないよ」
「じゃ、どうすれば勃つの?」

寛子は考えた。今は理恵の兄が使うような成人雑誌を用意できるはずもない。

「よっ、吉野、あのさ」
 
その時、今まで歯を食いしばっていた加賀がこうつぶやいた。

「吉野、お、おっぱい揉ませてくれないか?」

加賀は混乱する頭で、“ダメで元々“だと思った。そしてさらに目をきつく閉じ答えを待った。

「そ、そうすれば勃つかも知れない・・・・・」
「えっ、あたしの?」

寛子は突然の提案に驚いた。
加賀はペニスを勃起させるのに、寛子の乳房を触りたいと言い出したのだ。

「で、でも・・・・・」

今度は寛子が躊躇した。
両手を胸に当てて自然に防御の姿勢を取る。
しかし決心するのにそれほどの時間はかからなかった。
目の前に垂れ下がっているペニスが、寛子に決断させたのだ。

「い、いいわよ、でもそっとよ、そっと、ぎゅっと揉むと痛いの」

そう言いながら寛子は、椅子を加賀の隣に移動し、彼の左手が自分の乳房に届くようにした。

「そっとよ、そっと」
「わ、わかった」

加賀も次第に興奮しているのだろう。
息づかいが荒くなっている。
災い転じて何とやらである。



彼は今朝からすっかり落ち込んでしまい、親や教師に対しての言い訳ばかり考えて過ごしたのである。
それがまさか同学年でも評判の高い寛子の乳房を触れるチャンスを得ようとは夢にも思っていなかった。

おそるおそるといった感じで、加賀の左手が寛子の肩ごしに伸びる。
そしてためらいがちに制服の襟から差し込まれる。
寛子はその手を他人事のように見ていた。そしてついに加賀の手が、ワイシャツ越しに寛子の乳房を捉えた。

「くっ!」

その接触は決して強いものではなかった。
加賀は右手でペニスをつまみながらも、左手に全神経を集中した。
ワイシャツとブラジャーを通してではあるが、これまであこがれ続けた寛子の乳房の感触が伝わる。
それは想像をはるかに越えた弾力で加賀の手を迎えた。

「んんっ」

寛子の口から押し殺したような声が漏れる。

「おお、柔らけぇ」

加賀は感動的にうめいた。
寛子は視線を目の前のペニスに戻した。


その時だった。
それまでだらっと下がっていた加賀のペニスに変化が現れた。

包皮につままれている部分より先の亀頭にかけての部分が見る見るうちに膨らんでいる。

寛子は目を見張った。それはムクムクと膨張し、30秒もしないうちに元の大きさの5倍以上の体積に膨れ上がった。


「たっ、勃ってきた、だろ」
「うん、すごい」

加賀はペニスをつまんでいた手を離した。
が、それはたれるどころか勢いよく天を指し、ピンク色をした亀頭部分が、半分ほどではあるが包皮を押しのけて露出しているのが見える。

茎の部分にはいくつかの血管が青々と浮き出ており、鼓動にあわせてペニス全体が脈動しているのがわかる。
その根元の陰嚢も心なしか引き締まったように見えた。

寛子は乳房を愛撫されながら、この変化に感動を覚えていた。

“勃ったわ、ちんちんが大きくなった”

軽いため息をつくと、加賀は寛子の胸元からそっと手を引きぬいた。
今の彼にとっては迫りくる性欲より、この恥辱感と告げ口の方が心配だったのだ。

「こ、これでいいんだろ」
「・・・・・」


寛子は目の前で展開されたこの変化にすっかり圧倒されていた。

「ねえ、シャセイしてよ」

寛子はうっとりしたようにこうつぶやいた。

「!?」
“シャセイ?”

加賀はやんわりとした寛子の乳房の余韻に浸る間もなく、今の一言でさらに混乱した。

「ここで?・・・・・出すの?」

思わずそう聞き返した。

「うん、精子を出してみて」

もうすでに寛子にはまともな思考ができない状態だった。


これまで夢にまで見た射精の瞬間を、今まさに目にする事ができる。


それはすべてを優先していた。

「・・・・・」

同級生の目の前で、射精するなど今の加賀にとって想像すらしたことはなかった。


もちろん持ち帰ったブルマーの股間部分に顔を押し当て、自らの肉棒をしごき立てている時には、その布切れの持ち主いや、その中身に対しての羨望があった。
しかし唐突にこうした場面を迎えるとなると、中学2年の男子にはいささか刺激が強すぎるのである。

「そ、んな」
「できないの?シャセイ?」
「イヤ、で、できるけど」
「じゃ、早く、ほらもう6時になっちゃうわよ」

寛子はそう冷静に対応している自分に驚いていた。

「ね、そこに寝てやって」

加賀は寛子の視線をたどった。
そこには椅子と対になった折り畳みのテーブルが置いてあった。
そしてその内のひとつが、積まれないまま直接床に置いてあった。
寛子はそこを見ている。

「う、うん」

加賀は何かに操られるように、寛子の指示に従った。

彼の思考はすでに限界を超えており、羞恥心や罪悪感も感じてはいなかった。
そしてトランクスを膝まで下ろし、学生ズボンを足首に引きずったままの姿勢で、そろそろとテーブルに腰掛けた。ひんやりとした冷たさが加賀の裸の尻に伝わる。

寛子はそっと椅子から立ち上がると、加賀の右側、腰の横の床に座った。
目の前には先ほど乳房への接触で怒張したペニスが、しぼむ事もなく脈動している。

「さ、やって」
「う、うん」

テーブルに仰向けに寝た加賀はゆっくりとペニスを握った。
そして静かに動かしはじめた。

先ほどは横から見ていた寛子だったが、今度はそれを、ほぼ真正面から見下ろす形となった。
テーブルの端に両手を付いて、その部分を覗き込んでいる。

陰嚢から伸びた皮は、ひきつったような感じで先端部まで、伸びている。
その中心をまるで何かの傷痕のような縫い目が走っているのが見える。

加賀は目を閉じ、左手でテーブルの端をぎゅっと握り締め、次第に右手の上下運動を早くしていった。

“ああ、オナニーだ、これが男のオナニー”

寛子の股間にまたしても熱い快感が広がる。

“ああ、いやらしい、今私の目の前で加賀くんがちんちんをいじってる”
“はっ、はっ、はっ”

右手の運動とリズムをあわせるように、加賀の息遣いが激しくなる。
陰嚢もその動きにあわせて、踊っている。

2分ほど経過しただろうか?
加賀は突然右手の上下運動を中断し、半身を起こした。
それにつられてその行為を覗き込んでいた寛子の目の前に銃口のような鈴口が向けられた。

「よ、吉野」
「なに」

寛子は両手をついたまま首を横に向け、加賀の顔を見た。

「やっぱりこんな状態じゃ、よくならないよ」
「え?」
「出そうにないよ、精液」
「なぜ?」
「おれにもわからないけど、いつもと感じが違うんだ」

加賀の快感はあまりにも過激な刺激により、麻痺してしまったのだ。
若さの為ペニスの勃起こそ続いているが本人に快感は感じられなかった。
「どうする?」

「これじゃそのうち痛くなっちゃうよ」

加賀は救いを求めるように寛子に尋ねる。
しかし恥かしくてその目を見ることはできないままだ。

「じゃあ、さっきみたに・・・・触る?」
「う、うん」
「わかったわ」

寛子は軽快に立ち上がると、スカートの埃をはらい、加賀の足元を回って彼の左側へと移動した。

「あっ、吉野、ちょっと待って」
「えっ、なに」
「あの、あのさ」
「何よ」
「あの、パンツ・・・・・パンツ見せてほしい」
「えっ、パンツ??」
「うん、ちょっとでいいから」
「・・・・・」
「なっ、そうすれば出るかもしれないし」
「・・・・いいわ、ちょっと待って」

そう言うと寛子は加賀のすぐ横に立って、そっとスカートのすそを持ち上げた。

「こうすれば、いい?」


加賀の目の前で、紺色のギャザースカートが徐々にたくし上げられていく。
健康的な太股に続いて、これまた加賀が何度もその光景を思い描いた純白のパンティが現れた。
寛子は下半身をむき出しにしている加賀を見下ろしながら、言いようのない恍惚感を感じていた。

“こ、ここが吉野の、ああっ、吉野のマ○コ”

加賀も興奮し、右手の動きに力を入れる、しかし放出感が襲ってこない。

“?”

当惑しながらも、加賀は目の前の白い膨らみにそっと顔を押し当てた。
しばしばもてあそんでいるブルマーとは違った何とも言えない甘美な芳香が、加賀の嗅覚を刺した。
と、同時に恥丘部分に押し当てた鼻梁に奇妙な暖かさも感じた。


“あっ、だめ”
寛子は花びらからあふれ出ている愛液の事を思い出し、とっさに腰を引いた。

“あたしがこんな風になっちゃってるのは知られたくない”

「ダメよ、やっぱりイヤ」

寛子はスカートを下ろし、加賀の足元まで後ずさった。

「あっ、ごめん、つい」
「いいわ、でも、やっぱり下は恥ずかしい」

興奮の頂点に達する一歩手前で、加賀は現実に引き戻された。

「ごめん」

ペニスを握ったまま、また下を向いてしまった。

いくらこんな状況とはいえ、いきなり股間に顔を押し付けたのは失敗だったようだ。
加賀は反省した。
そして彼のペニスはその反省を裏付けるように、急激にその硬度を失いつつあった。

「うん、やっぱり下はダメよ、恐いわ」
「・・・・・」

加賀は、どうしてよいかわからずしぼみつつある自らの分身を眺めている。
その時、寛子の耳にチャイムの音が飛び込んできた。

“いけない、時間がないわ”

今、寛子は何が何でも射精シーンを見たかった。

もうその感情は、揺るぎ無く寛子の思考を支配していた。
そして無意識のうちに、こう口にしていた。


「じゃさ、あたしが・・・・・あたしが手でしてあげようか」
「え?」
「あたしが、それシャセイさせてあげる」
「い、いいよ、ダメだよ、そんなの」
「いいから、もう一度寝て」
「でも、そんな・・・・・」
「早くってば」

寛子は語尾に力をこめた。

「わかった・・・・・」

加賀は上半身を寝かせたものの、まだペニスを握り締めている。
それはもうすっかり強度を無くし、ほとんど彼の手の平の中に隠れてしまっている。

「やっぱやめてくれよ、はずかしいよ」
「いいから、黙ってて」

そう言うと寛子は、再度その腰の横に膝まづくと加賀の右手を払いのけた。
それは始めにトランクスを脱いだ時の状態に戻っていた。


“あれ?どうしてこんなになっちゃったの?”

寛子は驚いた。

「加賀くん、これ・・・・・小さくなってる」
「うん」
「さっきみたいにすればいい?、また大きくなる?」
「えっ、あ、う、うん」

加賀はもう抵抗を止めていた。

「こう?」

寛子は、ゴクリと喉を鳴らすと、そっと右手の人差し指と親指で茎の部分をつまんでみた。

ついに念願のペニスに直に触れる時が来たのだ。

不思議と不潔であるとか、汚いといった感情は浮かんでこなかった。

“あっ、やわらかい”

指先の感触は、さんざん練習台にした「ソックタッチ」やサラミなどよりずっと柔らかく、ずっと頼りない。

「うっ」

加賀がうめく。

寛子の指のひんやりとした感触が、茎の部分にここちよい刺激となった。

「あっ」

そのうめきと同時にそれは、寛子の指先を押し返すように脈動しはじめた。

“あっ、また勃ってきたわ”

つまんでいた二本の指を通して、先ほどの変化の時より、もっと急激に茎の部分に血液が流入するのが感じられる。

“ちんちんが膨らむ”

それはいつしか寛子の指を押し返すような勢いで、急激に膨張している。
寛子はまたもその変化に圧倒され、思わず指を離してしまった。
目の前にあったしなびたペニスは、一瞬にしてさきほどのように怒張し、加賀の腹の方を指し示す。

「す、すごい」
「うん、また勃った、大丈夫みたい」

寛子は渇ききった唇をなめると、今度はそのいきり立つペニスを
親指、人差し指、中指の3本で握った。

「ああっ」

加賀の全身を快感が突き抜ける。

“熱い、すごく熱いわ”

それは寛子の手の中で、まるで別の生き物のようにうごめいている。

“これが、勃ってるちんちん・・・・・き、きもちいい”

指を通して加賀が味わっているのとは別の快感が寛子を包み込んでゆく。
寛子は片手をテーブルにつくとペニスを真上から覗き込んだ。
そして3本の指をそっと下へ動かした。

茎の皮膚がずれる様子と、その中に芯のようなものがあるのがわかる。
そして先端の包皮がめくれ、あのピンク色をした亀頭と鈴口が姿を見せた。

“・・・・・・”

寛子はもう何が何だかわからなくなりつつあった。
腰から下、花びらを中心として、しびれたような、また倒れそうな快感が襲ってくる。

亀頭を完全に露出させると、寛子はさらに顔を近づけた。
これまで嗅いだことのない匂いがした。とてもよい香りと呼べそうにはなかったが、寛子はその香りを深く吸い込んだ。

“んん、ちんちんのニオイ”

そして指先にやや力を込めると茎の弾力を確かめるようにし、その反発を楽しんだ。

「どうすれば、どうすればいい?」

かすれた声で、寛子が尋ねる。

「そ、そのまま、ああ、上下に動かして」
「こう?」

寛子は自室での模擬行為を反芻するとともに、理恵の話、彼女の兄の行為を思い出した。

“こうやって千回こするの、シコシコって“
“それで右手でちんちんをこうやって、すごく早く動かすの”

そして大きく喉を鳴らすと、クラブをやっている割には、白く細い指でペニス全体を握り締めた。

“熱い、なんでこんなに熱いの”

そう思いながらも握り締めたペニスを、闇雲にしごきはじめた。

「いててて、いて」
「あっ、ご、ごめん」

寛子はあわてて手を離した。

「そ、そんなに強く動かしたら痛いよ、もっと、そおっと」
「うん、ゴメン、こんな感じ?」

寛子は再度ペニスを握ると、今度はゆっくりと上下に動かした。
握った手が下に降りるたびに、包皮がめくり上がり亀頭部が露出する。

「う、うん、そう、気持ちいい」

そうやって10往復程度右手を上下させると、自室での訓練の成果を試す時が来た。
左手で茎の付け根を押さえ、亀頭部を包んでいる包皮をずり下げると、右手の指でそっと亀頭部を撫でた。
かすかに湿った感触が、ちょうど「ソックタッチ」を思い出させる。

「ううう」

加賀が敏感に反応した。

さらに寛子はまるでいちごかなにかを摘むように人差し指と親指で、雁の部分をつまんでみる。
強弱をつけそうしていると、指先にここちよい弾力が感じられる。
茎を掴んでいた左手は無意識のうちに陰嚢を持ち上げていた。
中に球状のものがあるのが感じられた。

“あっ、これがタマタマだ”

そういえばこれまでの寛子の一人遊びには陰嚢が登場しなかった。

“タマ”が2つある事、袋に入っていること、男性にとってそこは致命的な場所であること、という一般的な知識はあったものの、理恵達の会話にもそれは出てこなかったし、陰茎とあまり結びつかなかった。
しかし、今こうして男性器を目の当たりにしてみると、陰茎と陰嚢は一体であることに再度気づいた。

「うううっ」

加賀が歓喜の声をあげている。その声に寛子はますます興奮した。

“やっぱりホンモノは違う“

寛子は陰嚢の重さを計るように手のひらに乗せ、親指で睾丸の感触を楽しんだ。
ペニスを握る右手に自然と力が入り、ゆっくりとした上下動を繰り返す。

「か、加賀くん、気持ち、いい?、気持ちいいの?」
「あっ、イイ、気持ちいいよ」

“くちゅ、くちゅ、くちゅ”



始めはただ出入りする亀頭部が包皮を押しのけるだけで、何の音もしていなかったが、いつしか湿った音がするようになっていた。
よく見ると亀頭部分がぬらぬらと光っている。

“あれ?”

不思議に思った寛子は、右手の動きを止めると包皮を下までずり下げた。
すると破裂しそうなほど怒張した亀頭部が顔を出す。

先ほどに比べ、より大きく、より張り出しているのがわかる。
その先端の鈴口をよく見ると、うすい液体が染み出ているではないか。

“これ精子??”

寛子は驚いた。
射精の瞬間は“びゅっ”と飛ぶのではなかったのか?
それに理恵は言っていた。

“精子ってさ、しばらく出てるのよ、“びゅっ”って飛ぶのは、1~2回で、その後はドロドロって・・“

やはり包茎の中学生と高校生では、射精の瞬間も違っているのか?

「ね?これ出たの?これが精子?」
「はぁ、はぁ、まだ、まだだよ」
「でも、ほら、これ」

その言葉に加賀が肘をついて身を起こした。

「これは、違うよ、精子じゃない、何だか知らないけど、やってると出てくるんだ」
「そうなの」

“なんだ、精子じゃないのか、よかった”

寛子は楽しみにしている射精の瞬間を思い描きながら、右手による刺激を再開した。

“くちゅ、くちゅ、くちゅ”

寛子の右手の動きにあわせて、その淫靡な調べがよりいっそう大きくなってゆく。

「ううっ、うっ、うっ」

加賀の声も、甘美な快感に打ち震えている。

「もう少し、早く、早く動かして」
「え、こう?これでいい?」

寛子は加賀の請うまま、右手の動きを早めた。

“くちゅ、くちゅ、くちゅ”

鈴口からあふれ出る液体は、亀頭部から流れ出し寛子の手をじっとりと濡らしている。
もちろんその液体は潤滑油となり、さらに加賀を歓喜させる。


寛子はもちろん瞬きもせず、こうした光景を目に焼き付けてはいたが、加賀のペニスをしごいている自分の右手と、陰嚢を支えている左手、リズミカルで淫靡な調べと加賀のうめき声を聞いている耳、そして股間の疼き、すべてが別の場所で起きているバラバラの体験のようだ。

「はっ、はっ、はぁ」

うめいている加賀が腰をすこしずらすと、その手が寛子の胸に伸びてきた。
そして制服の上からもはっきりと存在を主張している豊かな乳房を探る。

しかし今度は寛子は抵抗しなかった。
いや抵抗しようという意志はあるのだか、体が言う事を聞かないと言った方が適切だろう。
加賀の手がその膨らみを捕らえ、ゆっくりと揉みしだく。

“くちゅ、くちゅ、くちゅ”
「もっと、もっと早く、もっと」
「う、うん」

寛子は右手の動きをさらに早めた。
握りを親指、人差し指、中指の3本に戻すと、さらに力を込めて脈動するペニスをしごきたてた。

「ううっ、吉野っ、で、出そう」
「え?で、出るの」

加賀の申し出に寛子はどうしてよいかわからなかった。

“あっ、ダメまだ、ティッシュ、ティッシュ”

そこで寛子は気づいた。
放出される精液を受け止める物を用意しなければならない。

“くちゅ、くちゅ、くちゅ”

そう考えながらも寛子は右手の運動を中断しなかった。
いつしか寛子の乳房をまさぐっていた加賀の手も離れ、今は太股の脇できつく握り締められている。
と、その時だった。


「あああう!!!!」 


野獣のような咆哮とともに、突然加賀が腰を突き上げた。

テーブルの上に伸ばした加賀の足が突っ張り、寛子が左手で支えていた陰嚢がひくひくと収縮する。
同時に寛子の右手の指先にペニスが一層大きく膨らむような感覚がした。


“あっ、出るわ”


寛子は直感的にそう思い、とっさに破裂寸前のペニスを5本の指で握り締めた。
右手の平に、茎の中を何かが通過するのが感じられる。

そしてその様子を覗き込んだ瞬間、

“びゅっ、びちゃっっ”

にわかに鈴口が広がったかと思うと、猛烈な勢いで熱く煮えたぎった白濁液がほとばしり出てきた。

「きゃっ!」

寛子はそのあまりの勢いに一瞬身を引いた。
放出された第一波の精液はそれより若干早く、寛子の頬へ到達した。

しかし、その噴出はそれでは終わらなかった。

握りしめた寛子の右手がさらに流出しようとしている脈動を感じていた。

“まだ出る”

寛子は慌てて左手を受け皿にし、握り締めたペニスの先端へあてがった。
そして鈴口を押し広げ、溢れ出してくる液体を受け止めた。

「ううううう」

加賀が歓喜の声をあげる。
彼はこれまでに体験した事のないような猛烈な快感に全身をマヒさせた。


寛子は白濁した液体を凝視しながら、それを左手で掬い取るようにした。
しかしその流出は止まる事を知らずドクドクと溢れ出し、亀頭の裏側を伝い、ペニスを握り締めた寛子の右手の親指へとつたう。

さらに左手の制服の袖の部分や加賀の太股には、射精初期の精液が飛び散り、不透明な水溜まりを作っていた。

また、第一波として寛子の頬へ到達した液体は、じわじわとマグマのように寛子の口元へと流れている。

しかし寛子はそうした事をまったく気にしていなかった。


“シャセイ、ほんもののシャセイだ”

寛子は右手にまだズキズキと脈動を続ける加賀のペニスを握り締め、左手には放出されたおびただしい量の精液を溜めたまま、呆然と動く事ができなかった。

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カテゴリ:小説・物語
テーマ:フェチ - ジャンル:アダルト

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